病態
1. AHPとは
- 急性肝性ポルフィリン症は、英語名(acute hepatic porphyria)の略称で「AHP」と呼ばれることがあります。
- ポルフィリンは、グリシンとサクシニル-CoAという物質からいくつかの過程を経て作られる物質で、体内で鉄と一緒になるとヘムとして存在します。
- AHPは、ヘムを作る過程で必要な酵素(タンパク質の一種)の遺伝子に変異があることでヘムが上手く作れず、ヘムが作られる途中段階の物質(ヘム生合成中間体※)が体内で必要以上に多くなって、これらが神経の働きを障害することで、急に起こる激しい腹痛に加え、手足の脱力/痛みや便秘/下痢、不安感、頻脈など様々な症状が持続する遺伝性の病気です。
ヘム前駆体、ポルフィリン中間体などと呼ばれることもあります。
ヘムを作る過程で必要な酵素の遺伝子に変異がない場合
ヘムを作る過程で必要な酵素の遺伝子に変異がある場合
2. AHPの症状を引き起こす原因
- AHPの患者さんは、肝臓でヘムを上手く作ることができないため、それを補おうとしてヘムを作るために必要な「ALAS1*」という酵素の量が必要以上に多くなっています。
- その結果、ヘムが作られる途中段階の物質[ALA(アミノレブリン酸)、PBG(ポルフォビリノーゲン)]が体内で過剰に産生され、これらが神経の働きを障害することで、激しい腹痛に加え、手足の脱力/痛みや便秘/下痢、不安感、頻脈など様々な症状が持続すると考えられています。
3. AHPのタイプ
- AHPには、4つのタイプがあります。
- 「ヘム」を作る過程で必要な酵素にはいくつか種類があり、どの酵素の遺伝子に変異があるかで分類されます。
急性肝性ポルフィリン症(AHP) | ||
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急性肝性ポルフィリン症(AHP) | ❶ 急性間欠性ポルフィリン症 | AIP |
❷ 遺伝性コプロポルフィリン症 | HCP | |
❸ 異型ポルフィリン症 | VP | |
❹ ALA脱水酵素欠損ポルフィリン症 | ADP |
4. AHPの症状
- AHPでは、急に起こる激しい腹痛に加え、手足の脱力/痛みや便秘/下痢、不安感、頻脈など、以下に示すような持続する症状を伴うことがあります1,2)。
- Anderson KE, Bloomer JR, Bonkovsky HL, et al. Ann lntern Med. 2005;142(6):439-450.
- Pischik E, Kauppinen R. Appl Clin Genet. 2015;8:201-214.
- AHPと診断された患者さんすべてで、これらの症状があらわれるわけではありません。激しい腹痛などの症状があらわれることなく、日常生活を送ることができる患者さんもいます。
- AHPでは、症状を誘発するものが知られています。症状の有無にかかわらず、日常生活では症状を誘発するものを避けるように心がけることが大切です。⇒「AHPとのつきあい方」をみる
5. AHPの合併症
- AHPの患者さんは、AHPなどの病気にかかっていない方と比べて、高血圧や慢性腎臓病、肝がんになるリスクが高いとされています3)。
- Balwani M, Wang B, Anderson KE, et al. Hepatology. 2017;66(4):1314-1322.